今、求められるハラール食品への理解
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「ハラール」という言葉をご存知でしょうか?
食品に関わるものとして世界的にその需要と重要性が高まっており、日本でもインバウンドの拡大などにより注目されています。ここでは、特に持続可能な社会を目指すSDGsの観点から、ハラール食品の役割に焦点を当ててご紹介します。
INDEX
ハラールってなに?
ハラール(ハラルともいう。)とはアラビア語で「許されている」という意味です。イスラム法に基づき、ムスリム(イスラム教徒)の生活全般において合法とされるものを指します。特に食品分野では、「ハラールフード」と呼ばれる神に許された食べ物がムスリムの日々の食卓を支えています。
具体的には、野菜や果物、魚介類、穀物、適切な処理が施された牛肉や鶏肉などがハラール食品に該当します。一方で、豚肉、アルコール、適切に処理されていない食肉、血液などは「ハラーム(禁じられたもの)」とされ、厳格に分けられています。
さらに、ハラールかどうか判断が難しい「シュブハ(疑わしいもの)」も存在します。例えば、調味料や輸送方法などが該当し、多くのムスリムはこれらを避ける傾向があります。そのため、ハラール認証制度が生まれ、世界中で食品の安全性と信頼性を保証する仕組みが構築されています。
なぜハラール食品が重要なのか?
現在、世界には約18.5億人のムスリムが存在します(2022年推計)。この数字は増加傾向にあり、将来的には世界人口の3人に1人がムスリムになると予測されています。この人口増加に伴い、ハラール食品市場の拡大が必然的に進んでいます。
特に、食糧問題に直面している発展途上国やムスリム人口の多い地域では、ハラール食品が解決策の一つとなり得ます。例えば、たんぱく質危機(※)を解消するための画期的な技術が開発されたとしても、それがハラールでなければ世界人口の3分の1を占めるムスリムには受け入れられません。このように、ハラール食品は食糧問題の解決においても無視できない要素となっています。また、代替たんぱく源の普及や、環境負荷を軽減する持続可能な生産技術の導入など、ハラール食品はその需要を通じてSDGs達成の一翼を担っています。
※たんぱく質危機:人口増加や食肉需要の拡大、環境負荷の増大により、動物性たんぱく質の供給が不足するリスクを指す。持続可能な解決策として、植物性たんぱく質、昆虫、藻類、培養肉などが注目されている
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ハラール×SDGsの最新トレンド
ハラール食品はSDGsのさまざまな目標に貢献できる可能性を秘めています。特に、食糧問題の解決や環境負荷の低減、経済成長の促進において重要な役割を果たします。ここでは、SDGsとの関連性が特に高い素材や事例を中心に、ハラール食品の可能性をご紹介します。
●スピルリナ
次世代のたんぱく源として注目される「スピルリナ」。二酸化炭素を吸収し、少ない資源で効率的に栽培できるこの藻類は、食糧危機解決の切り札とされています。日本の企業がイスラム教を主な宗教とするブルネイ政府のハラール認証を取得したことで、世界中のムスリムにも安心して提供できるようになりました。
<最新トレンド>
健康志向のハラールフード市場:高栄養価が特徴のスピルリナを使ったスムージーやサラダが、東南アジアや中東のハラール対応レストランで提供されている。
スポーツ栄養市場:ハラール認証を受けたプロテインバーやドリンクにもスピルリナが使用され、アスリートや健康志向のムスリムに人気。
●プロテオグリカン
サケの頭部から抽出される「プロテオグリカン」は、化粧品や食品の原料として注目されています。肌の保湿や関節の健康を助ける成分で、主にコラーゲンやヒアルロン酸とともに体内に存在します。この素材も日本アジアハラール協会から認証を取得しており、サスティナブルな開発が進められています。
<最新トレンド>
スキンケア市場:プロテオグリカンを配合したハラール対応の保湿クリームや美容液が、日本から輸出されている。
高齢者向け食品:プロテオグリカンを含む機能性食品が、ムスリムの高齢者に向けて販売されている。
●ファイバリクサ
「ファイバリクサ」は、食物繊維不足を補う低粘度の水溶性食物繊維。ハラール認証を取得しており、東南アジア市場に進出しています。
<最新トレンド>
ヘルシーフード市場:ハラール認証を受けたパンやパスタの原材料として採用され、健康志向の家庭やレストランで使用されている。 飲料市場:ファイバリクサを加えたハラール対応の食物繊維飲料が人気を集めている。
ハラール食品を取り扱う場の広がり
ハラール食品は、次のような場所での取り扱いが増えています。
●レストラン
チェーン展開:マレーシアやインドネシアで、日本料理チェーンがハラール対応メニューを開発。寿司やラーメンなどがムスリムに人気。
観光地対応:京都や大阪など日本の観光地では、ハラール認証を取得した飲食店が増加。ムスリム観光客の食事のニーズを満たしている。
●食品販売店
スーパーマーケット:日本国内でも、ハラール認証を受けた食品が販売される店舗が増加中。特に輸入食品や冷凍食品が注目されている。
オンライン販売:ハラール対応のスナック菓子や調味料、冷凍食品がECサイトで購入可能。海外在住のムスリムへの供給も進んでいる。
●学校や医療機関
給食:ムスリム留学生が多い学校では、ハラール対応の給食が導入されている。
病院食:日本の病院でも、ムスリム患者のためのハラール認証食が提供され始めている。
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ハラール食品への理解が未来を変える
ハラール食品は、単に宗教的な規範を守るためのものではなく、いずれ世界の3分の1を占める 人々の食生活を支え、観光、教育、医療など幅広い分野での対応が求められているものです。ハラール認証の取得は、グローバル市場での信頼性向上にもつながり、SDGsの達成に向けた一歩ともなります。これからの日本においても、ハラールへの理解と取り組みが、国際社会における重要な課題としてさらに進展していくことでしょう。
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本記事は信頼性の高い情報源(公式ウェブサイトや公的な団体、ハラール認証取得企業の情報)をもとに著作権に配慮のうえ作成しています。
(参考にさせていただいたウェブサイト)
一般社団法人ハラル・ジャパン協会 https://jhba.jp/halal/
ハラール認証 NPO法人 日本ハラール協会 https://jhalal.com/halal-cert/about-halal
一般社団法人ハラル・ジャパン協会 食品開発展 2022 ハラルビジネスレポート https://jhba.jp/new/10887/
Salam Groovy Japan https://www.groovyjapan.com/taberumo-2/
一丸ファルコス株式会社 https://www.ichimaru.co.jp/research/proteoglycan/70
ナガセヴィータ株式会社 https://www.nagase-foods.com/jp/products/fibryxa/