科学で探る睡眠リカバリー
皆さんは、朝すっきりと目覚めることができていますか?
日中のパフォーマンスや心身の健康を維持するうえで、睡眠は欠かせない要素です。とくに「リカバリー(回復)」の視点からは、眠りの質を高める工夫が重要になります。ここでは、睡眠環境・最新技術・栄養などの側面から、研究や実践で注目されているポイントをご紹介します。
INDEX
眠りの質は枕で変わる
枕の高さは、首や肩への負担だけでなく、呼吸のしやすさに影響します。高過ぎる枕では首が前に傾き、呼吸がしにくくなることがあり、低過ぎる枕では首が反り返って肩や首の緊張が残る場合があります。自分に合った枕の高さを見つけることは、ぐっすり眠るための基本です。
さらに、センサーを用いて睡眠中の姿勢や呼吸、寝返りを「枕」を用いて測定する研究があります。たとえば、枕の下に配置した圧力センサーから無線でデータを取得し、呼吸数や寝返り数を推定するセンサー式の枕が報告されています。また、印刷エレクトロニクスを応用して、寝巻に組み込める薄型センサーで呼吸周期を計測する方法も国内で検討されています。これらの技術は、個々の体格や姿勢の違いに合わせて寝具を最適化する基盤となって、より自然な姿勢の維持と睡眠の質向上につながる可能性があります。
このような寝具や環境の工夫に加えて、近年では「眠りの中身」を可視化しようとする研究も注目を集めています。その中心にあるのがAIです。
AIが拓く睡眠改善
AIはすでに睡眠研究の分野で活用され始めています。たとえば、脳波や心拍データを解析し、睡眠の深さを自動で判定するアルゴリズムが開発されています。
睡眠には、夢を見ることが多い「レム睡眠」と、脳と体をしっかり休める「ノンレム睡眠」があり、これらがおよそ90分前後の周期で繰り返されます。AIの利用でこうした睡眠段階を自動でスコアリングできるため、従来は専門医による測定が必要だった情報が、ウェアラブル機器やアプリでも簡単に利用できるようになってきています。
今後は、家庭用の睡眠モニターとAIが連携し、「寝返りのタイミング」や「深い睡眠の割合」をリアルタイムに把握できるようになるかもしれません。これにより、個人に合わせた睡眠改善のアドバイスや、健康リスクの早期発見につながる可能性があります。

栄養と睡眠によるリカバリー
睡眠の質を支えるのは寝具や技術だけではありません。栄養面からのサポートも大切です。とくに注目されているのが「良質なたんぱく質」です。
たんぱく質の「質」は、必須アミノ酸のバランスを評価する「アミノ酸スコア」という指標で表されます。「アミノ酸スコア」とは、食品中のたんぱく質に含まれる9種類の必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスチジン)の割合を基準値と比較し、栄養価を0〜100の数値で示したもの。この数値が高いほど、体内で効率よく利用される良質なたんぱく質とされます。スコアが100の食品は、卵、牛乳、魚、大豆などです。一方、穀類などはスコアがやや低い食品ですが、他の食品と組み合わせて補い合うことで、全体としてバランスを高めることができます。
こうした良質なたんぱく質は、筋肉や神経の修復を助けるだけでなく、睡眠中のリカバリーをささえる重要な栄養素でもあります。
日本の研究では、女子大学アスリートを対象にした調査から、たんぱく質やビタミンの摂取量が多いほど睡眠の質が良好である傾向が示されています。また、別の国内研究では、αs1-カゼイン加水分解物とL-テアニンを含む食品が健常成人の睡眠の質を改善する可能性が示されており、乳由来たんぱく質の活用がリカバリーに役立つことが注目されています。
このように、日常生活でも夕食に魚、大豆製品、乳製品などのたんぱく質を多く含む食品を積極的に取り入れることが、翌朝の疲労回復感の改善に寄与する可能性が期待されます。

【本原稿で参考にさせていただいた文献】
J-STAGE「枕の高さ変化が呼吸機能に及ぼす影響」(日本生理人類学会誌)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpa/4/1/4_KJ00001897239/_pdf
J-STAGE「頸椎胸椎アライメントを考慮した枕の首肩への負担と睡眠への影響」(『睡眠と環境』)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsleepenvi/17/1/17_9/_pdf
J-STAGE「圧力センサ枕による睡眠時呼吸・体動計測システムの実現(計測自動制御学会論文集」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicetr1965/37/7/37_7_593/_article/-char/ja
J-STAGE「センサ枕による人の睡眠中生理量計測(日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 2000)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmermd/2000/0/2000_60_5/_article/-char/ja
J-STAGE「プリンテッドエレクトロニクスを用いた呼吸周期を計測可能なウェア型センシング(ヒューマンインタフェース学会論文誌 22(2))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/his/22/2/22_165/_pdf
DeepSleepNet: A Model for Automatic Sleep Stage Scoring Based on Raw Single-Channel EEG
(EEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering )
https://ieeexplore.ieee.org/document/7961240
健康日本21アクション支援システムWEBサイト「眠りのメカニズム」(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002
U-Sleep: resilient high-frequency sleep staging(npj Digital Medicine, 2021, Perslev M. ほか)
https://www.nature.com/articles/s41746-021-00440-5?utm_source=chatgpt.com
Sleep Quality and Nutrient Intake in Japanese Female University Student-Athletes: A Cross-Sectional Study
Okamoto K, 他. Healthcare (Basel). 2022;10(4):663
https://www.mdpi.com/2227-9032/10/4/663?utm
J-STAGE「αs1-カゼイン加水分解物とL-テアニンを含有する食品が睡眠の質に及ぼす影響(女性心身医学)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/21/1/21_114/_pdf/-char/ja
一般財団法人日本食品分析センター「食品たんぱく質の栄養価としての『アミノ酸スコア』」NEWS No.46(2005)
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