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宇宙ステーション計画で注目される食糧は?

NASAでは宇宙ステーションでの自給自足に関する研究を着々と進められています。そのなかには宇宙食の開発はもちろん、植物などを宇宙で栽培し、食料を得るといった研究もされているのです。今後注目されている理想的な宇宙で収穫する食糧とその研究についてご紹介しましょう。

宇宙ステーション計画で注目される食糧は?

宇宙空間での植物栽培は難しい

宇宙空間は無重力、高真空。人が生きるためには宇宙ステーションなどの特別設備が必要になります。また当然、食糧、水、酸素なども必要です。これらの食糧や酸素は地球から運搬していますが、火星を探査する場合、片道でも約520日、往復では約1040日かかるため食料だけでも大量になり、こうした物資を輸送することは、非常にコストが高くつきます。そのため、宇宙開発を目指す国の研究機関では、人が宇宙で長期に自給自足するためのシステムの開発が研究されてきました。

たとえばNASAでは、長期の宇宙滞在に備え、野菜を宇宙環境で栽培する実験を続けています。食料を生産する手段として、まず食糧となり得るイネ苗のほか、キャベツ、レタス、タマネギなどの種子や球根から育てる実験にとりかかりましたが、残念ながら、根、茎、葉に分化し維管束を持つ体制が発達した「高等植物」の栽培は、難しいようです。

宇宙開発研究者が選ぶ植物は?

スピルリナ顕微鏡写真

宇宙ステーションでの植物栽培が難しいといわれる理由のひとつに、植物の生態があります。地球上の植物は、一般的に重力に引かれて根が伸びる一方で、重力に逆らい、光に向かって芽が伸びていきます。無重力の世界では植物はどちらに向いて芽を出し、どこに根を出してよいのか戸惑ってしまうのかもしれません。このことから、成長にあたって重力が大きく関係しない「食用藻」が注目されるようになりました。宇宙ステーションのような限られた密閉空間のなかでは、限られた空気や水を循環・再生するシステムがどうしても必要となってきます。これらの目的に合った機能素材として、選ばれたのが「スピルリナ」なのです。

選ばれた根拠として、3つのことがあげられています。

1】光合成で増殖する藻であること
スピルリナが光合成によって炭酸同化作用を行い、増殖する藻であることは大きな利点となる。宇宙ステーション内で人間が呼吸すると炭酸ガスが発生し、通常はこれを吸着剤などで除去しているが、藻などであれば、光の力を借りて、効率よく炭酸ガスを吸収し、酸素を発生して、人間の住める居住環境を確保することができる。

【2】高い消化吸収性をもつこと
増殖したスピルリナは、人にとって消化吸収されやすい細胞構造をもっているため食糧として利用できる。

【3】真水でなくても増殖できること
宇宙では真水は貴重なもの。しかし、スピルリナは真水でなくても増殖できる。

スピルリナを利用するシステムの研究は、米国のNASA、日本のJAXA、このほかにロシア、カナダ、ドイツ、フランスなどでも進められています。なかでもNASAとJAXAの共同研究は有名で、密閉容器の中でのハムスターとスピルリナ、テラピア魚とスピルリナの実験など、その成功が報告されています。

スピルリナが宇宙ステーションで活躍!

約40リットルのスピルリナ培養液があると、一人の人間が一日に必要とする酸素と食糧を供給できるそうです。DICライフテックでは、JAXA共同で、閉鎖系生命維持装置の開発をしています。この装置は、スピルリナと魚を共存させ、お互いの生命維持を実現するものです。魚は必要とする酸素を光合成藻類のスピルリナから得、一方で魚が排出した炭酸ガスをスピルリナが光合成(炭酸同化作用)に利用することができます。これは、宇宙ステーション内で長期間にわたり酸素と食糧を確保することを目的としています。

閉鎖系生命維持装置
閉鎖系生命維持装置
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