世界で広がる代替食品とは?
近年、ニュースなどで話題となることの多い代替食品。健康志向、サステナビリティ、アニマルウェルフェアなどの観点から生活者の関心が高まっており、代替食品の開発に取り組む企業も増えています。今回は、世界中に広がりつつある代替食品についてご説明します。
INDEX
代替食品のイメージが変わった?
代替食品とは、何かの食材に味や見た目を似せて作った、別の食材を原料とする加工食品。以前からあるものとしては、カニかまぼこやマーガリン、発泡酒などが有名です。かつての代替食品は、高価な食材の代替品として製造されることが多く、「本物にはかなわないけれど、安価に楽しめるコピー食品」というイメージがあったことも否めません。ところが近年では、見た目や食感が本物と遜色ないばかりか、元の食材よりも高価な代替食品も登場しています。
植物性代替肉が人気の理由
代替食品のなかでも急成長しているのが、植物性代替肉。大豆やえんどう豆を使った商品などを、よく見かけるようになりました。世界の植物性代替肉市場は、2022年で70億ドル台とされていますが、2028年までには150億ドル台に達すると予測されています。こうした人気の背景には、肉という食材に対する人々の意識の変化があります。
健康志向:代替肉は低脂質・ローカロリー
肉に含まれる栄養素といえば、たんぱく質。たんぱく質は、私たちの体を形作るだけでなく、エネルギーにもなる重要な成分で、人間の体に必要な5大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミン)のひとつです。
ところが、現代人の食生活は脂質や糖質が多く、さまざまな生活習慣病をまねく原因として問題視されています。肉はたんぱく質が豊富な一方で脂質も豊富ですから、肉料理は高脂質・ハイカロリーになりがち。そこで、植物性たんぱく質を原料とした、低脂質・ローカロリーな代替肉が注目されているのです。
持続可能性:代替肉は環境にやさしい
畜産には、たくさんの水資源や土地が必要です。牛や豚のえさとなる穀物を育てる必要がありますし、家畜自体も水を飲みます。また、家畜のフンや尿といった畜産排水が、水質汚染の原因となるという指摘も。さらに、畜産は二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスを大量に排出することが知られています。こうした、水不足や森林破壊、地球温暖化といったさまざまな問題と畜産の関係が取り上げられるなか、植物性たんぱく質を使用した、代替肉への意識が高まっているのです。
アニマルウェルフェア:代替肉は動物を犠牲にしない
肉を食べるということは、牛や豚、鶏といった動物の命を奪うことです。アニマルウェルフェアとは、「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態(※)」のこと。世界の畜産の現場では、食肉生産の効率性を重視するあまり、劣悪な環境で家畜を飼育しているケースもあります。こうした家畜は、ただ人間に食べられるためだけに育てられ、ストレスや苦痛のなかで一生を終えているのです。
人間が生きるには、何かを食べなくてはいけませんが、「はたして動物を殺す必要があるのか?」。そうした疑問をもち、食肉について見直す人が増えています。
※)出典:農林水産省Webサイト
活気づく代替食品市場
さまざまな理由から、世界中で注目されている代替肉。日本でも一般的なスーパーで見かけるようになり、大豆などが原料のプラントベースミートを使用した、ファストフード店やカフェやレストランも増えてきました。そのほか、代替たんぱく質としては、スーパーフードとして知られるスピルリナなどの藻類由来のもの、コメたんぱくや小麦たんぱくといった植物性のものなど、代替素材の開発や実用化が進められています。
また、多くの企業が参入することで、ますます技術革新が進み、市場も活気づいています。「本物の肉よりもおいしい代替肉」が登場するのも、そう遠くない未来の話かもしれませんね。